おもしろ経済学史

ブログから離れていると読書がはかどるなー。



新版・おもしろ経済学史―歴史を通した現代経済学入門

新版・おもしろ経済学史―歴史を通した現代経済学入門



未だ読み途中だけど、おもしろかった所。



●「重農主義」と訳される、フランソワ・ケネーが創始した
18世紀フランスのフィジオクラシー(physiocracy)は、
もともと「自然による支配」という意味。
その背景には、人間社会にも神が与えた眼に見えない秩序が
存在しているのだと言う考えが有った。
経済にもそうした自然の秩序が有り、
その秩序に従って無理無く運営されるべき、という考え。
自然法とも関係が有るなど、興味深い指摘。
ちなみに「フィジオクラシー」は後代に付けられた呼称で、
当時は「エコノミスト」と呼ばれていた。
エコノミストと言えば彼らしか居なかった)



●耕作地が広がるほど、生産性の低い劣った土地を
使わなくてはいけなくなってくる。
そして最後に耕作に着手される最も劣った土地の生産性が
小麦の価値を決定する、という限界生産力説と同様の
論理を、19世紀前半のリカードが既に使っていた。
でも1870年代の限界革命の経済学者たちは、
別に自覚にリカードの論理を一般化させたわけでは
なさそう。
科学史で言うところのパラダイム・チェンジか。




限界革命を代表する経済学者の一人、
イギリスのジェボンズは、当時の唯一のエネルギー源で、
無尽蔵と思われていた石炭が、
やがて枯渇する恐れがあることを統計的に示した本『石炭問題』
で評判をとった。
ついでに太陽の黒点の数と景気の循環との間に相関関係が有ると
統計データで示した。
ちなみに20世紀になってもピグーが結構まじめに取り上げている。
今では笑い話的なエピソードだが、経済統計の考え方や方法の発展という
意味では、重要な業績だと言える。





●同じく限界革命を代表する経済学者の一人、
オーストリアメンガーは、優れた教育者でもあり、
ウィーン大学の先生としてオーストリア学派と呼ばれる後進を育てた。
さらに、サラエボ事件で暗殺された皇太子の家庭教師も努めていた。
しかし、メンガーの研究者としての後半生は決して恵まれていたとはいえず、
「経済学とはどのようなものであるべきか」という、あまり
生産的とは言えない論争に、後半生のほとんどを割かれてしまった。
そのため、他の専門領域の膨大な量の本を読破し、書き込みをした。
そしてその膨大な量の書き込みをされた蔵書はと言うと……


メンガーの蔵書は第1次世界大戦のの混乱の中で日本に渡り、現在、一橋大学図書館に保管されているが、私はそれを見る度に痛々しい感じを否めない。


(26ページ)

過去の偉大な経済学者へ、時折、こんな著者のコメントが
顔を出しますが、手短でありながらそれだけに
ぐっと来るものがあります。