貿易赤字について、教科書ではなんと言ってるか?
先日の日記に書いた、
「本当に中流階級であるためのコストは高くなってるのかね?」
という疑問に就いて、車の値段とか住宅の値段とか、
総務省統計局のWEBサイトなどでちらちらと調べたんですが、
あんまりこれはという資料が見付けられませんでした。
おとなしく週末に図書館でも行ってぼちぼち資料を探してみるかな。
めんどい。
夏休みの自由研究(?)もはかどらないうちに、もう秋ですねー。
昨日なんかトンボを見つけちゃってびっくりしました。
そんな時に又気になることが出てきてしまいました。
日経新聞で「プラザ合意20年」という特集をちょくちょく連載されていて、
1980年後半の日米通商摩擦と、今のアメリカ政府から中国政府への
元の切上げ要求をダブらせる、良い特集です。
でも、当時の旧・大蔵省の方とかIMF(国際通貨基金)とかへの
インタビュー等ばっかりで、其は良いんですけど、
まともな経済学者の分析が載らないんですよね。
当時の担当者のインタビューって、大体
「貿易不均衡は悪い事で、プラザ合意での国際マクロ政策協調は正しかった」
と仰っています。
まあ当時の公的機関の担当者だから当然と言えば当然ですが。
でも私でも持ってる経済学の教科書(マンキュー先生のやつ)でも、
1980年代のアメリカの貿易赤字はレーガン大統領の財政政策が原因だ、
という様な事が書いてあったと思います。
それに、貿易赤字は悪い事なんかじゃなくて、19世紀のイギリスの経済学者の
リカード以来、貿易はお互いの国にとって良い事だ、というのは
常識だと私は思ってました。
(というか、どちらの国も、より多くの物を消費できるようになって、
良い事だから貿易は行われている)
記憶が不安に成ったので、押入れのダンボール箱から、
埃をかぶっていた教科書を引っ張りだしてきました。
(ちなみに此は私が社会人になってから「経済の事でも知っとかんといかんな」
と思ってブックオフで買ったもので、ちゃんと勉強した訳じゃないっす)
- 作者: N.グレゴリーマンキュー,N.Gregory Mankiw,足立英之,中谷武,地主敏樹,柳川隆
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2003/03/01
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幾つか引用しますと、86ページより
ケース・スタディ:1980年代の財政政策
(前略)
1980年、ロナルド・レーガンは軍事支出の増加と減税を掲げて大統領に選出された。
この政策の組み合わせが政府の収入と支出の大幅な不均衡をもたらしたことは驚くには当たらない。
連邦予算の赤字は1980年代に急増し、政府による借入れは平時には前例のない利子率になった。
われわれのモデル(引用者注:長期の閉鎖経済モデルのこと)が予測するように、この財政政策の変更により利子率は上昇し、国民貯蓄は減少した。(後略)
また、195ページより、
(前略)
当時(引用者注:1981年ごろ)の連邦政府は、平和時としてはかつてない規模の財政赤字に踏み込み始めた。
この政策によって国民貯蓄は減少し、巨額の貿易赤字が生じた。
すなわち、アメリカの貯蓄はアメリカの投資を賄うのに十分ではなくなったので、諸外国がアメリカに対して貸付を始めたのである。(後略)
と書いてありました。
貿易赤字や利子率の上昇は、自分の国の貯蓄の不足が原因という訳ですね。
実際、日経新聞の同記事(9/20)でも次の様に鋭く指摘されています。
保護主義圧力 再び
(前略)
85年のプラザ合意前 1ドル= 240円前後だった円は87年末には120円付近まで上がったが、米経常赤字は85年の約1200億ドルから87年には1600億ドルに拡大。
為替調整を通じて経常赤字を減らすというプラザ合意の本来の目的は達成されなかった。(後略)
ここまで書いてるんなら、あともう一歩、経済学者を登場させて
ガツンと一言、言って貰いたかったです。
私が知る限りでは、8月1日号の「日経ビジネス」誌で、コロンビア大学教授の
ジョセフ・スティグリッツ先生が、インタビューに対して次の様に述べられているのが、
目に止まりました。
元切り上げでは解決せず
(前略)
人民元切り上げに対する外圧は、そもそも巨額の対中貿易赤字と、国内マクロ経済政策の失敗による財政赤字を抱えている米国の不満からです。
これは20年前、巨額の貿易赤字と財政赤字を抱えていたレーガン政権の日本に対する動きを髣髴とさせるものです。
当時も、問題は米国のマクロ経済政策にあって、日本の経済活動が悪いわけではなかった。
今回も問題があるのは米国の政策であり、中国の政策ではありません。(後略)
ちなみにスティグリッツさんも経済学の教科書を執筆されていて、日本でも販売されています。
- 作者: Joseph E. Stiglitz,ジョセフ・E.スティグリッツ,秋山太郎,木立力,藪下史郎,金子能宏,清野一治
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 1999/04
- メディア: 単行本
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私が社会人になって、まったく経済について知らず不安でしょうがなかった頃、
こっちの本にもお世話になりました。
そんな教科書の著者が、経済学で教えてくれた事を、
現実問題について発言してくれているのを見ると、とても頼もしく感じられます。
……いや、でもそういえばマンキュー先生は現ブッシュ政権の第一期に、
大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長をしてらしたな。
もう辞めてしまわれたけど、財政赤字と貿易赤字のことを、
どう思ってたのかな……。
気になります。
日本の経済学者も、プラザ合意の時とか、90年代のクリントン政権の
日米通商交渉の圧力などで煮え湯を飲まされた怒りをばねに、
ぜひ米中貿易摩擦についてガツンと発言して欲しいところです。
「日本は今こそ中国に対してパンダの恩返しをするべきである!」
……と右翼がまじめに叫ぶギャグが大友克洋の漫画にありました。
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何か取りとめもなくなってきたのでこの辺で。
(私はいつもだらだら書きすぎで、「くどい!」とよく怒られます……)