(メモ)CPIは上がってるのに、GDPデフレータはなんで下がってんの?

ヨドバシカメラAkiba




(注意:山無し、意味無し、落ち無し)



今日の日経新聞の14ページ目に景気指標が載っていました。



先日の竹中平蔵さん(経済財政&郵政民営化担当大臣)が
日経新聞へのインタビューで答えていた事で、GDPデフレータ
触れていましたが、実際の数字はおっしゃっていなかったので
私は気に成っていました。
それが丁度数字で出ていたので願ったり適ったりと言う感じで
見てみました。



の前にず竹中さんの発言の要旨はこんなもんでした。


【日銀の金融量的緩和緩和のタイミングについて】



 ・未だデフレ脱却とはいえないので早い。

 ・なぜなら、10月にも漸くCPI(消費者物価指数)がプラスに転じる見通しだが、

  実物経済が潜在成長率を上回る伸びを続けているのに、

  GDPデフレーター(=名目GDPに対する実質GDPの割合)は未だマイナスだから。

まあ日本銀行総裁福井俊彦さんも、CPIがプラスに転じたとしても、
原油価格の上昇や労働コストを除いて考えて、本当に需給バランス
(=総需要と総供給の差が縮まってるかどうか)を調べないといけないよ、
と同誌によると発言されてるので、もうしばらくは金融の量的緩和政策を
止めないんじゃないでしょうか。
(むしろ、日銀の一部では、インフレ・ターゲッティング政策が
 主張され始めているようです)




さて、竹中さんが言ってるように、本当に
CPIは上がってるのに、GDPデフレータは下がってんのかね?
日経の景気指標から実際の数字を見てみよーう。




先ず消費者物価指数(=CPI、Consumer Price Index)を
見てみよ。
この数字の出所は総務省です。
ただし、日経紙には、2005年度は各月の数字が出ていましたが、
此所ここでは2005年6月の指数を使っています。



CPI
2002年度 −0.8%
2003年度 −0.2%
2004年度 −0.2%
2005年4〜6月期 −0.2%

ほんと、10月にはプラスに転じるっちゅう予測も
当りそうな勢いですね。



次に、日経紙には、名目GDPと実質GDP(ともに内閣府調べ)は書いてあったので、
これGDPデフレーターが算出できますね。
なお、2005年度の4〜6月期の数字は、季節調整済み・年率換算済みです。


名目GDP 実質GDP GDPデフレータ
2002年度 497.5兆円 513.5兆円 −3.1%
2003年度 501.6兆円 524.0兆円 −4.3%
2004年度 505.5兆円 534.1兆円 −5.4%
2005年4〜6月期 510.7兆円 544.5兆円 −6.2%

上のGDPデフレータの数字は、「(名目GDP÷実質GDP)−1」で
私が計算した物です。
4年間で2倍近くに、どんどん低下してますねー。



ちょっとまとめてみましょう。


CPI GDPデフレータ
2002年度 −0.8% −3.1%
2003年度 −0.2% −4.3%
2004年度 −0.2% −5.4%
2005年4〜6月期 −0.2% −6.2%


同じ物価を示す指数ですが、消費者物価指数(CPI)は
もう少しでプラスになりそうなのに、
なんでGDPデフレーターはどんどん低下してしまってるんでしょう?
両者の指数は、基本的にはそんなに差が開くもんではないと思うのですが……。



でも此所ここで、私の曖昧な記憶では、二つの指標の定義がいい加減なので、
復習の為にもマンキュー先生のマクロ経済学の教科書を開いてみました。
まさかの歳に成って教科書を度々開く事に成るとは思わなんだ。



マンキュー マクロ経済学 第2版〈1〉入門篇

マンキュー マクロ経済学 第2版〈1〉入門篇



本書の42ページより、


CPIとGDPデフレーター



(前略)


GDPデフレーターとCPIとは、経済の物価水準に関する情報としては少し異なっている。2つの指標には、3つの主要な相違点がある。



 第1の相違点は、GDPデフレーターが生産された財・サービスすべての価格を対象とするのに対して、CPIは消費者に購入された財・サービスのみを対象としている点である。
したがって、企業や政府によって購入された財・サービスの価格の上昇は、GDPデフレーターには反映されるが、CPIには反映されない。



 第2の相違点は、GDPデフレーターが国内でつくられた財のみを対象とする点である。
海外から輸入された財はGDPに含まれないので、GDPデフレーターにも算入されない。
したがって、日本で製造されてアメリカで販売されるトヨタの乗用車の価格の上昇は、消費者によって購入されたのでアメリカのCPIに影響するが、アメリカのGDPデフレーターには無関係である。



 (第3の相違点については長いので中略。ラスパイレス指数とパーシェ指数の相違に就いて)



しかしながら、幸運なことに、GDPデフレーターとCPIの相違は現実には大きなものではない。



(後略)

2つの指標の差が出てくるのは、大体、企業や政府向けの商品やサービス、
それから輸入品の所で差がつく訳ですね。


ちなみに、「国内企業物価指数(日銀調べ)」、「企業向けサービス価格指数(日銀調べ)」、
それから「輸入物価指数(日銀調べ)」も日経新聞に掲載されていたので
表にしてみました。
ただし、数字は前年比で、2005年度の数字は6月時点のを引用してます。


国内企業物価指数 企業向けサービス価格指数 輸入物価指数
2002年度 −1.6% −2.1% −0.8%
2003年度 −0.5% −1.2% −1.8%
2004年度 1.5% −0.4% 6.6%
2005年4〜6月期 1.4% −0.5% 9.4%


これを見ると、GDPデフレーターには関係無いけどCPIに影響するという
輸入物価指数は、2004年度から大きく上昇してます。
マンキュー先生のおっしゃる、「第2の相違点」の所です。



以前、「海外から安い商品が入ってくるからデフレスパイラルでどうのこうの」
と言う方がいらしゃいましたが、少なくとも此所ここ2年では
外国の製品は16%以上高くなってるみたいですね。
むしろ、日本がデフレから脱却するのに輸入品は役に立ってくれてる事になります。
更に、6月の時点では原油価格の上昇とかは未だ消費財には転化されてないでしょうから、
これからもっと上がるかも知れませんね。




逆に、CPIには関係無いけどGDPデフレーターには影響する
「国内企業物価指数」はプラスだし、
「企業向けサービス価格指数」はマイナスって言っても
たったの−0.5%です。



マンキュー先生のおっしゃる「第1の相違点」によると、残るは
「政府に因って購入された剤・サービス」なんですが……。
政府支出がそんなに影響するのかなー?
政府が買うのって、道路とか橋とか、
郵便配達員の乗る赤いスクーターとかですかね?
そんなに値下げするとも思えんが……。



まあ単純に考えれば、小泉政権財政支出を減らしてるので
政府向け財・サービスの市場の需要が減り、
価格が下がるってるのかも知れません。
でもGDPの中で政府の支出は購入の占める割合は、
120兆円弱で、500兆位円以上のGDPの24%位にはなります。
(財政の規模って80兆円ぐらいだった気もするけど。何が正しいのかな?)



Asahi.com より、「政府支出(実質季調値)93SNA」
http://www.asahi.com/business/data/gdp306.html



でも仮に、「政府が買ってくれないなら生きていけないので、
もう幾らでも値下げしますよ」という日本政府への寄生虫企業が
ばっかりだったとして、24%の部分で仮に10%価格が低下したとしても、
全体では約2.4%下がるだけです。
GDPデフレーターが−6.2%も落ちてる事には説明が付きません。




まあ此所迄ここまで書いておいてなんですが、結論としては、
分かんないという事で、寝よっと。