金融緩和は量か利子率か?

ricamo2005-10-06



この頃日銀の量的金融緩和政策の解除(のタイミング)を巡って、
竹中平蔵さんと日銀の間で、押し合いしておられるようです。



日銀は、条件が揃ったら量的金融緩和を解除する、と言っていて、
竹中平蔵さんとか財務省などは、もちっと待てと言っています。



日銀は手段を金利の誘導に変えるだけで、別に
本来の目標である金融緩和を止めるつもりじゃないと
私は理解しているんですが……。
なんで竹中さんと日銀の間で対立になってるのか、
私の知識では良くわかりまへん。



私は金融についてど素人なので、先日買ったまま読んでなかった
次の本を読んでみました。



経済ニュースの読み方 (朝日選書 (781))

経済ニュースの読み方 (朝日選書 (781))



この本の第19章「ゼロ金利と日銀」の133ページより、ちょっと引用が長いですが、



(前略)


通常、中央銀行が行う金融緩和政策は、名目金利の引き下げである。ところが、名目金利ゼロなら、それ以上の金利引下げは出来ない。景気回復の為に日銀が金融緩和を行いたくても、通常の手段では、金融緩和が出来ない状況に追い込まれているのだ。


(中略)


金利の引き下げがなくても、ベースマネーの量(日銀が供給する紙幣などの量)を増やせば、金融緩和は出来るではないか、という意見もあるだろう。実際、2001年3月に始まった量的金融緩和製作は、金利がゼロになってしまったので、ベースマネーの「量」を増やそう、という政策だ。



しかし、量的金融緩和政策に、景気を刺激する効果があるという学問的にしっかりした根拠はない。経済学的根拠は(今のところ)見あたらないが、とりあえず、紙幣の供給量を増やせば市場関係者や国民の不安が鎮まるだろう、という高度に「実践的」な判断で行われているのが、量的金融緩和政策である。


(後略)

いままで「日銀はお金をバンバン民間に流してるから、
人々のサイフも緩み、物価も下げ止まってきたんだろう」
と私は素朴に想像していたので、
うーん、こうはっきり「経済学的根拠は無い」と指摘されると、
結構驚きました。



私が単に経済学を知らないだけですが、どうも経済学
ケインズ経済学)の理論上、金融緩和政策として
お金の供給(マネーサプライ)を増やすのは、あくまでも
利子率を低くする為だったんですね。



つまり、日銀が銀行にお金を供給するにあたっては、
供給する量をふやすのは手段であって、
利子率を下げると言う目的が達成できなければ無意味なのでしょう。



いくら銀行にお金がたくさんあっても、銀行はただで
企業にお金を上げるわけじゃ有りません。
それじゃ商売が成り立ちませんし。
日銀の目的は、銀行などの使えるお金を増やして、
「これで利子を安めで企業に貸してやっておくんなさい」という
為だったんですね。


私は本書を読んで、今迄素人の考えで、日銀が量的に金融緩和すれば
企業にもがんがん金が流れ込んできて、企業はそれを使って
ブルドーザー買ったりベルトコンベア買ったりして投資に使うんだろうと
思ってました。
甘かったですね。



車とかの市場で例えば、自動車メーカーが車を作り過ぎちゃったから
といって、そのままの価格だったら、特に車買う人が増えるわけじゃ
ありません。
「作りすぎちゃって、余らしたくないので安くしときます」
と値下げして、初めて買う人が増えるわけです。


ということは、自動車メーカーが「これ以上はいくらなんでも
安く出来ねえ!」という価格まで安くしちゃったら、
もうどんなに車の在庫が余っちゃってても、
買う人はそれ以上は増えないですよね。


日銀がコントロールしてるのは銀行が貸せる手持ちのお金であって、
(上の例で言ったら自動車の数)
これを幾ら増やしても、利子率(自動車の価格に相当)
がこれ以上下がらなかったら、
企業の資金需要(上の例だと車を買ってくれる人の数)
は増えないのです。


そして、金利はゼロパーセントより下げる事が出来ません。
1万円預けておくと9千円にして返しますよ、なんて
言われても誰も預けないですからねー。
毎年確実に10%以上のデフレが続く、とかの超デフレスパイラル
にでも成ってない限りは……。


どうも私にとっては金融という世界には未知の世界なので、
銀行に金を渡せば渡すほど、民間に流れるお金は増えると
思ってましたが、銀行と企業の取り引きでも
需要の供給のバランスの法則があるという、
ごく初歩の経済学の理論を理解できていなかったようです。



……で、そもそも何の話だったけ……。



竹中さんと日銀で量的金融緩和の解除のタイミングで
意見が一致してないのは、なんでなのか、でした。


以上つらつらと書いて、日銀が本来の
金利の誘導にもどりたいという理由は
根拠があるな、と思えました。
いまコールレートは0.002%と、
あいかわわらずゼロに近いですが、
長期金利の代表の10年もの国債の利回りは、
1.5%以上に回復してます。



竹中さんの方はどうなんでしょう?
たしか先日の会見で、マネーサプライが
もっと増えてもいいはずなのに増えてないと
おっしゃってたと記憶しています。



なんかすでに良く分からなくなってきたので
また次の機会にでも続きを考えます。
というか私の知識では考えても時間の無駄なので
本を読んで勉強しないとあきませんな。