ネット配信の広告料は誰からもらう?

今日の日経新聞の企業面2に載っていた、
あるビジネスモデルに私は興味を引かれました。
映画制作会社の21cityとネオプレックスという2つの会社が、
インターネットを活用した新しい映画事業に乗り出した、
という記事です。



その記事によると、まず来年の1月から映画を製作した後、
日本での劇場公開よりも先に、4月からインターネット上で
欧米や韓国向けに配信するのだそうです。


また、欧米の大手ポータルサイトで映像コンテンツを
配信する際には、配信料を受け取り、ネット広告収入の
一部を受け取る契約にするそうです。


これによって、日本での劇場公開する前に、
或る程度知名度を高められるので、
宣伝の費用を削減することが出来ます。


また、視聴者の反応をつかんでおくことで、
映画ビジネスには欠かせないDVD販売、テレビ放映権、
キャラクター製品販売などのマーケティング
先手を打って進めることが出来ます。


また、海外では日本の映画やアニメに関心が
高まっていますが、その公開は劇場での上映ばかりで、
結果として大作や有名作品に集中してしまっていました。
インターネット上での映像配信なら、
劇場公開よりもコストが掛からず、
外した場合のリスクも低く、より多くの作品を
海外に供給できる、という壮大なビジョンもある様です。



私が興味深いと感じたのは、海外でネット配信した際に、
配信料だけでなく、ネット広告収入の一部を受け取る、
という点です。


何で広告して入ったお金の一部を受け取れるんでしょう?
私の知識では、広告というのは自分の商品を
目立つ場所で宣伝させてもらう代わりに、
その場所の持ち主にお金を広告料として支払うものだと
思っていました。
そういう意味ではないのかな?


海外のポータルサイトがアジア映画特集などのイベントを
行うときに、素材の提供のような形で自社の映像コンテンツを
提供してあげるので、その見返りに広告収入を
貰うということでしょうか?
(でもその場合、そのポータルサイト
 どんな収入があるんだろうか?)


そう思って、くだんの会社をサイトで調べてみました。



ネオプレックス
http://www.neoplex.co.jp/



また、同サイトからリンクされていた
「新社会システム総合研究所」という所のページ


日米合作「ブロードバンド&映画 融合型コンテンツ」≪BRIDGE≫とは?


http://www.ssk21.co.jp/contents/tiff_bridge.html


(このページに「国際クリエイティブ・エージェンシーである
「21city株式会社」(www.21city.jp)」というリンクがあるんですが、
私のパソコンでは「サーバーが見つからない」という表示がでました……。)



ワールドワイドなブロードバンド配信と、新しい広告ビジネスモデルを実施


 「BRIDGE」では、日本に先駆けて、海外のメジャー・ポータルサイトやISPにてコンテンツを配信する予定です。海外リリース後、日本で劇場公開やインターネット配信を行います。また、スポンサーを募って、広告付き無料コンテンツ配信を、日本と海外の両方で、展開することを計画しております。このように、「BRIDGE」では、劇場とインターネットの連動、海外と国内の連動、広告付き無料コンテンツ配信ビジネスの開発など、グローバルなデジタル・エンタテインメント時代を先取りした様々なスキームを展開する予定です。

なるほど、私が意味を理解していなかったことが分かりました。
今回のニュース記事で広告といっているのは、映画の広告ではなくて、
他の会社の商品の広告だったんですねー。
そして、その会社(=スポンサー)からお金を貰うという
訳ですね。


この部分はUSEN社の「GyaO」などがやっている
映像のネット配信サービスと同じ仕組みかな?
映像作品の冒頭などの時間帯に広告枠を設定して、
そこに自動車かなんかのCMを入れるんでしょう。
ネオプレックス社と21city社の場合は、
コンテンツ自体を自分のところで制作するんでしょうけど。


映画制作に関しては「北斗の拳」と同様、
ファンド方式でお金を集めるようです。
そういう意味では、いろいろな新しいビジネスモデルの
方法を組み合わせて活かしています。


私が一つ気がかりなのは、こちらのビジネスモデルの
一番の目玉であり、おそらく唯一の独自の部分の
(と私の知識で思うだけですが)
海外での先行したネット配信が、どの程度
日本での宣伝に繋がるのか、という点です。
海外のネットで配信して、効果あるんだろうか?


まあ実際にやってみる前に効果を否定してしまうのは
良くないですね。
それに、この場合海外のポータルサイトから
配信料をもらうわけで、海外での自分の作品の
広告については、広告料が掛からないどころか
寧ろ収入になるので、損することは無さそうです。
公開する場所によって時間差を作ることによって、
後で公開する場所での宣伝に変えてしまうという発想は、
私には新鮮でした。
(海外のサイトで配信されようが、日本列島でも
 見ることは出来ますが……)



ただ、最近、大作の劇場映画は、多くが
全世界一斉公開をしています。
その理由は、一日遅れるごとに、ネット上で違法コピーが
流れてしまうからです。


でもまあ、「GyaO」の配信している動画のデータが
コピーされたという話は聞いたことが無いので、
今のところ暗号化さえしっかりやっとけば
大丈夫なのかな。


あと、劇場公開やネット配信と、広告収入で賄う無料配信は、
両立するんでしょうか?
いずれ、CMが入る代わりにただでネットで見られると
分かっている映画を、1,800円ぐらい支払って映画館で見る人は
どのくらい居るんだろう?
このあたりは、具体的なそれぞれの費用対効果を俎上に乗せないと
何とも言えません。
月末に東京国際映画祭でこのビジネスモデルを発表するそうだから、
其所では数値例が出されるのかな。



まあ、なにはともあれ勘違いが解けてすっきりしたー。