牛丼を食べるかどうか

フロア




Newsweek」という写真週刊ニュース雑誌の
11月16日号を私がパラパラとめくっていたら、
アメリカ産の牛肉の輸入再開について特集がありました。



私は以前は牛丼をばかすか食っていたのですが、
(ちなみに松屋派)
狂牛病が話題になってから、やはりちょっと怖くなって、
このところ牛丼からはご無沙汰していました。



私は医学的な点も、アメリカ政府と日本政府の交渉についても、
まったくフォローしてなかったんですが、なんとなく
アメリカ産牛肉が日本列島に入ってくるのは
嫌だなー、入ってきても俺は食べねえぞ」とか
ぼんやり思ってました。



まあ時々無性にがっつりと食べたくなって、つい
食べてしまうんですが……。



果たして、アメリカ産牛肉は安全なんでしょうか?
安全だと、私は再び松屋で安心してがつがつ食えるます。
まあ吉野家でもいいんですが。



で、そのNewsweek誌によると、次のように書いてありました。


リスク評価は困難――食品安全委員会の報告は、なぜかそれとは逆の「ゴーサイン」として報じられた。


(前略)


「輸入再開へ」と伝えた日本の報道には、きわめて不可解な部分もある。プリオン専門調査会の答申はリスクがないと断じたわけではないし、むしろ「リスク評価は困難」としている


(後略)

ちょっと引用が短いですが、なにやらメディアの情報操作が
あったようなことが書いてありました。
もう、何をどこまで信じていいものか……。
なんだかだんだんメディア不信に陥ってきそうですが、
こういうのって結局自分でなるべく一次資料にあたって
自分で確かめるしかないなとも私は思ったので、
とりあえず11月1日付けの日経新聞を探して見てみました。
すると、7面には、こんな感じの記事がありました。



「米牛肉輸入再開へ」



食品安全委員会プリオン専門調査会の答申案を受け、12月に米国とカナダ産牛肉の輸入が解禁される見通しとなった。ただ、米国やカナダでは生後20ヶ月以下に限るなどの輸入再開条件を確実に守る体制が整っておらず、消費者の不安が確実に払拭されたとは言い難い。


(中略)


プリオン専門委員会が出した結論は条件付き。


(1)日本向けは生後20ヶ月以下の若い牛に限る。


(2)脳や脊髄などプリオンの集まりやすい部分を取り除く


――の2条件が米国とカナダで守られれば、日本と米、カナダの牛のBSE(牛海綿状脳症)の危険性の差は非常に小さいと結論付けた。



(後略)


初め読んだとき、私はてっきりプリオン専門委員会というところが
「輸入OK」という結論を出したのかなーと解釈してました。
でも、もう一回読んだら、プリオン専門委員会が出した結論というのは
ただ「日本と米、カナダの牛のBSE(牛海綿状脳症)の危険性の差は非常に小さい」
ということのようです。
まあこれは、私の読解力不足というものでしょうね。



あと肝心な、元の食品安全委員会というところの発表した文書というやつを
私はネットで探してみました。



内閣府 食品安全委員会
http://www.fsc.go.jp/



内閣府のサイトのトップページに、水色の下地に書かれた
食品安全委員会」というリンクがあります。
この「食品安全委員会」の新着情報欄に、
『「米国・カナダの輸出プログラムにより管理された牛肉・内臓を摂取する場合と、我が国の牛に由来する牛肉・内臓を摂取する場合のリスクの同等性」に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)について』
というニュースがありました。



私はすでにこの長いタイトルを見ただけで、「あ、無理」と思いました。
「審議結果(案)」っという文書を一応見てみましたが、
PDF形式で46ページもあります。
「評価(案)のポイント」というファイルが、
パワーポイントみたいな見やすい資料になってたので、
それだけ申し訳程度に目を通してみました。



この資料の5ページ目の「結論」によると、


結論



■科学的同等性を厳密に評価するのは困難

 ・米国・カナダに関するデータの質・量ともに不明点が多いため

 ・管理措置の遵守を前提に評価しなければならなかったため



■輸出プログラムが遵守が仮定した場合、米国・カナダ産牛肉等と国内産牛肉等のリスクの差は非常に小さい



■輸入が再開された場合、管理機関による輸出プログラムの実効性・遵守状況の検証が必要

食品安全委員会の結論のようです。




私はここまで調べてみてよく分からなくなってきました。



私がこれだけ読んだところ、食品安全委員会の「結論」では、
食品安全委員会アメリカ牛肉が安全とは言ってはいないようです。
「結論出せって言ったって、アメリカの出した資料がひどすぎて何も言えねえよ!」
とのっけからちゃぶ台をひっくり返しているので、
その後の安全性の条件もアメリカに対する嫌味のようにも読めます。



そういう意味では、最初に引用したNewsweek誌のいうように、
誰も「リスクは無い」なんて言ってないのに、
なぜか日経新聞では「輸入が解禁される見通しとなった」と
判断されています。



まあ、政治的な流れというか文脈みたいなのがあって、
食品安全委員会が「アメリカ産牛肉は危険だ」
という結論を出さなければ、それが事実上のGOサインになる、
というようなお話になってたのかもしれません。




でも、この食品安全委員会のPDFファイル資料の4ページ目を見たら、
今回の委員会の調査の目的は、
日本の前月齢の牛肉と、アメリカ&カナダ産の20ヶ月齢以下の
牛肉の安全性を「比較すること」のようです。



なので、食品安全委員会から「アメリカ産牛肉は危険だ」という
結論は初めから出てくるはずが無いとも私は思いました。
逆に言ったら、「アメリカ産の牛肉は安全」という結論も、
出てこないはずだと思います。
委員会が出せる結論は、あくまで、
「日本産よりリスクが高いかどうか」です。



ここまで書いてきて、私は自分の立てていた問題設定が
初めから間違っていたことに気が付きました。
アメリカ産の牛肉が安全かどうか」は、
別に問題になってはなかったんですね。



アメリカ産だろうが、日本産だろうが、
脳みそがスポンジになる病気にかかるリスクが0%ではない、
というのが前提で、あとはその危険性が高いか低いか、
という確率的なお話だったのかな、と私は感じました。



私はどっかに安全な牛丼があるはずだとか安直に思ってましたが、
「これなら絶対安心?」とかいう楽な牛丼の世界はもう無いんですね。



でもそんな病気になる確率の比較って、どうやって測るんだろう?
というか、検査の方法は、アメリカの方法と日本の方法とでは
明らかに違いがあるんですけど、確率には影響を及ぼさないのかな?



それから、食品安全委員会はただ「日本産よりリスクが高いかどうか」
だけを判断したんだったら、結局のところ、いったいだれが
輸入OKというゴーサインを出したんだろう?
誰も何も言ってなくても、ある委員会がある条件を否定しなかったら、
自動的に結論が出てしまうのが政治の世界なのかなー。
よく分かりませんが。



あと私が気になったのは、同じく資料4のページ目に
アメリカ・カナダ産牛肉等(日本向け)」という表記です。
アメリカとかカナダの国内向けと、日本への輸出向けで、
違う肉とか処理をしてるんでしょうか?



まあ最近のSEBの話だけでそんな悲観的な結論を出すのも早計かと
思うので、もうちょっとさかのぼって牛丼というか狂牛病について
調べてみたいと私は思います。
あとプリオンというやつについても、
科学的な知識を持っておきたいところですね。