松竹の利益率の変化とその要因は?
もう一週間前の記事ですけど、1月24日の日経新聞に
映画会社の松竹の決算情報が載っていました。
それによると、2005年3〜11月期の連結業績は、
- 【売上高】715億円(前年同期比:5%増)
- 【経常利益】10億5,100万円(前年同期比:75%減)
- 【純利益】3億3,500万円(前年同期比:8割減)
でした。
不調の理由として挙げられていたのは、
- 映画興行で目立ったヒット作がなかった。
- DVDやビデオの販売も振るわなかった。
- 不動産事業でテナントの賃料値下げ要請に応じた。
良かった事としては、
- 演劇では歌舞伎を中心に好調だった。
が挙げられていました。
上の数字を見て、一番私が印象に残るのは、
売上は5%と増えているのに、
純利益が8割も大きく減っている事です。
単純に考えれば、なにかしらの理由で
利益率が低くなったから、
売上は増えても利益は小さくなったんだと私は思います。
あと私が思ったのは、不調の理由の1〜3は
どれらも売上高の減少を説明できますが、
今期の売上高は5%と、若干ですが増えています。
(売上を5%伸ばすのも大変な事ですが)
映画興行やDVD、ビデオの減少分を穴埋めするぐらい
歌舞伎が好調だったんだろうか……?
ちょっと原因を分析してみたくなったので、
松竹さんのサイトのIR(investors relations:投資家向け広報)
情報のページを見てみました。
http://www.shochiku.co.jp/guide/ir/index.html
この「平成18年2月期第3四半期」が3月1日から11月30日までの
業績なので、日経記事で取り上げている内容に合致しています。
5ページ目の損益計算書から、一万円以下を切捨てると、
決算項目 | 2004年3〜11月 | 2005年3〜11月 | 増減率 |
---|---|---|---|
(a)売上高 | 682億1,938万円 | 715億5,154万円 | 4.9% |
(b)売上原価 | 366億8,960万円 | 412億9,322万円 | 12.5% |
(b÷a)売上高原価率 | 53.8% | 57.7% | - |
(a-b)売上総利益 | 315億2,977万円 | 302億5,832万円 | ▲4.0% |
(c)販売費及び一般管理費 | 266億5,742万円 | 285億3,767万円 | 7.1% |
(c÷a)売上高販管費率 | 39.1% | 39.9% | - |
(a-b-c)営業利益 | 48億7,234万円 | 17億2,065万円 | ▲64.7% |
({a-b-c}÷a)売上高営業利益率 | 7.1% | 2.4% | - |
(d)営業外収益 | 3億1,106万円 | 6億1,847万円 | 98.8% |
(e)営業外費用 | 9億9,352万円 | 12億8,732万円 | 29.6% |
(a-b-c+d-e)経常利益 | 41億8,988万円 | 10億5,180万円 | ▲74.9% |
({a-b-c+d-e}÷a)売上高経常利益率 | 6.1% | 1.5% | - |
ふう疲れた……。
(「▲」はマイナスを表す)
数字を手入力で写し間違ってたら松竹さんごめん。
これを見てみますと、売上が伸びれば、仕入れとか製造費とかのコストも
増えるでしょうけど、(a)売上の伸び率(4.9%)を上回る率で
(b)売上原価が 12.5%の上昇して、
また(c)販管費も 7.1%上昇してしまっています。
私は決算書の見方などは良く知らんのでど素人の考えですが、
一見、(a-b)売上総利益は4%下がってるだけだし、
(c)販売費及び一般管理費は7.1%上がってるだけなのに、
差し引きした(a-b-c)営業利益の段階ではマイナス64.7%もの
差が付いてしまうのは不思議な感じがしてしまいました。
ただの数字のトリックかな。
それぞれの項目別に前年度と比較するだけじゃだめっぽいです。
そこで、各年ごとの売上高に占める割合で見ると、
(b÷a)原価の売上に占める割合は2004年の 53.8%から
2005年の 57.7%に 3.9ポイント上昇。
(c÷a)販管費の売上高に占める割合は同
39.1%から 39.9%に 0.8ポイント上昇しています。
({a-b-c}÷a)営業利益率が 7.1%から 2.4%に 4.7ポイントの
マイナスになっていますが、たぶん原因の多くは
原価率が上昇してしまったせいなんだと私は思いました。
「平成18年2月期中間決算」の「個別財務諸表の概要」の
15ページ目を拝見すると、事業別の売上高が書いてあったので
余裕があれば見てみたいもんですが、
どうせなら格部門ごとの売上だけじゃなくて利益も
書いて欲しかったなー。
それにしても、日経紙では「映画興行で目立ったヒット作なかった」
とありますが、松竹さんのサイトでは
『チャーリーとチョコレート工場』がヒットした、と書かれてあったのが
おもしろかったです。
まあ何を基準にして「ヒット」と言うのか良く分かりませんが……。